12月24日

 少し喋って、明るくなるまで眠って、一緒にお昼を食べることにして身支度。「メイク道具を貸して」と言うのでおどろいた。次の瞬間にはうれしくなり、いろいろ出して説明した。

 

 気になっていた洋食屋を訪れたらすんなり入れて、しかも、ハンバーグがびっくりするほどおいしくて感動した。ハンバーグって私のなかではそんなに大した存在ではないんだけど、あれは大した存在。早くまた食べたいもの。カニクリームコロッケももちろんおいしかったし、シンプルでバターっけのないマッシュポテトもおいしかったし、赤出汁のお味噌汁もおいしかった。甘く煮られたにんじんも、私だからとことん苦手に感じただけで、にんじん好きな人にとってはたまらなくおいしいんだと思う。

 お腹が満たされたら眠くなって、コーヒーを飲みたくなって、でも外に出て冷たい空気に触れてからがいいよねと話して、本当にそのとおりにした。私も彼も川上未映子が好きで、というか好きなものがマティスとかA GHOST STORYとか「そこで?」という被り方をしていたのでなかよくなった節もあると思うんだけど、私がいちばん好きなお菓子を「いまはカヌレ」と言ったら川上未映子の飼っている犬がカヌレなんだと教えてくれた。その流れもあり二人ともカヌレを食べるしかなかった。ストーブのあるテラス席でブランケットをかぶって、コーヒーを飲みながらカヌレをかじって。二軒目で話していたことを聞いた。元夫と別れてから完全に終わるまでのいきさつ、そのあと一瞬だけ付き合った人がいたこと、運転しないのは人を殺さないため、どんな人に好かれる?と聞かれたら「文学部っぽい見た目の女が好きな男」と答えたらしい。元夫についての話はまだ覚えているけど、それ以外は全部記憶から抜け落ちてる。最後のに至っては出まかせだし、なんでそんな風に言ったのかさっぱりわからない。だからトイレにイヤリングを流したりするんだよ。そもそもなんであの動線で落ちるわけ。そんなに勢いよく振り返ったんだっけ私は。

 そのまま一つ先の駅まで散歩。小さな神社でお参りしたり、とにかく坂道のある方を歩いたりしていた。靴音が響くくらいに静かな住宅街だった。この時間がすごくよかったのになぜかあまり書けない。ついに地下鉄に乗って、私は栄で降りることが決まっていて、この子はどうするのかなと様子見していたら一緒に降りたので笑ってしまった。用事(ヘアビューロンのストレートも買うことにしたので、その代金を支払いに美容院へ行くこと。年内に支払い完了すれば10%オフ)に付き合ってもらって、そのあとは丸善にとても長いこといた。小説や新書を片端から見て、詩を見て、絵本を見て、最後は参考書まで見た。ここを出たらお別れなのだと思ったらなんだかさみしかった。晩ご飯に誘うこともちらとよぎったけど、もう丸一日を超えて一緒にいたし、今日じゃなくてもいいかなって。あっさり別れて短くLINEをして、一枚の袋に入りきらない量の食材を買った帰り、小脇に抱えたパンの匂いを感じながら「どうしようかな」とかなりはっきり思った。そう思ったまま掃除と料理と洗濯をして、年始の約束を決めて、夕食を食べて、「あと2週間もある…!」というかわいいLINEに「かわいいね」と返したりしていたら母から電話。「前言ってた婦人科系の症状はどうなったの」「紹介したい人がいる」「結婚する気はあるの」「お見合いするならそのときまでに治しておいた方がいいんじゃない」と言われて、全部違うと思いながら丁寧に説明していると、少しずつ現実に戻っていくのを感じた。